からみつく煙といちごの赤

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2年ぶりに歯医者に行った。「虫歯ゼロですね」と言われる予定だった。で、「トホホ〜! 治療じゃないから保険が適応されないよ〜」と言いながら健診代を払いたかった。

「二つ虫歯がありますね」と言われた。

 

なんなの〜?

 

電動歯ブラシで1日3回磨くし、磨き方も問題ないですねと言われるし、フロスも使っているし、グチュグチュペーもするし、何がいけないの? 前世? それとも私に「病院は悪い場所」とか「歯磨きをいっぱいするなんて色気付いてるねえ」とか言い続けてきた家族?

これからもこのペースで歯を削り続けていたら、いつか歯がなくなってしまう!! 嫌だよ〜。別に入れ歯なら入れ歯でもいいんだけど、それが色々まわりまわって弱って死ぬのが嫌だよ〜。

でも死は誰にでも平等に訪れるもんな・・・(急な真顔)。

 

とぼとぼ帰宅すると、ポストに定期購読している『ハルメク』(雑誌)が届いていた。60代シニア女性のための雑誌。この世で一番面白いのはハルメク。次LDK beauty。次LDK。これが所帯じみるということであるなら、私はもうズンズン所帯じみていきたい所存です。

ハルメクには「コーヒーを飲むと色々あって耳が悪くなる」と書いてあった。夫にその話をすると「耳が悪くなりたくはないけど、デッカイ声でお返事をするおじいちゃんにはなりたいから、悩ましいね」という返答。考えてみると私たちはコーヒーを飲まないのでこの会話は全て無駄である。

 

午後は息子と散歩。

贔屓にしている和菓子屋の団子がただひたすら食べたくなり、団子ゾンビのような気持ちで歩いていたのだが、また臨時休業。今週はずっと閉まっている。悲しい。休業の理由、「孫の入学式シーズンだから」みたいな理由であってほしい。

 

悲しいので、闇雲に1時間ほど歩いたところ、知らない駅についた。たばこ屋さんが3軒ほどあったし、コンビニ程度の面積の電気屋さん(田舎出の人間は知っているよね、コンビニ程度の面積の電気屋さん・・・)が2軒あった。

パン屋さんを発見したので入り、1500円分ほどパンを買い込む。一つのパンが200円程度でじゃっかんエクスペンシブだったので、なんとなくカナダを思い出す。一体全体ここは田舎なの? カナダなの? あ、カナダは田舎か・・・。ベン図を書かねばならない・・・。

 

パン屋を出て、線路沿いの道を歩いていると、八百屋があった。

横を通っていると、八百屋のおじさんにデカい声で「買っていきなよ!!」と話しかけられる。野菜は昨日買ってきたところだし間に合っているなあ、とは思ったが、つっけんどんに断るのも感じが悪いかしらと思い、ひとまず果物だけを買うことに。

息子が「みかん食べたい」と言ったのでみかんを買おうと思ったら、おじさんが「イチゴを買いなよ!!! 安くするよ!!!」と言ってくる。おじさんはさらに「ちょっとごめんね!!!」と言うとタバコに火をつけた。

私が悩んでいるとおじさんは別の通行人に「買っていきなよ」と言う。「イチゴを買いなよ!! 安くするよ!!!」と言う。呼び込み文句が1パターンしかないのか。

通行人は地域の人で、いつものことなのか笑っていた。

「いいよ、買うよ。味がボケてないのがいいんだけど」「しっかり見てるから全部美味しいよ!! でもね、俺はもうボケちゃってるんだけどね!!」

1分ほどしてから「ああ」とお客さんは言った。「今の、面白いね。俺はボケちゃってるけど、いちごの味はボケてないんだ」「そうだよ!!!」

お会計時、イチゴは1パック450円のまま、特に値引きはされなかった。

しばらく歩いたところでおじさんが追いかけてきたので、何かなと思ったら、息子に向かって「ハイタッチ!!」と叫ぶ。息子は愛想良くタッチ。手と手が触れ合ったその瞬間、おじさんは低い声で「ウワッすげえ熱い手だな」とつぶやいた。

 

八百屋を離れてしばらくしてから、息子は思い出したように「楽しかったね・・・」と言った。「そうだね」と答えた。

 

*

 

昨日から反出生主義に関する本を読んでいる。森岡正博『生まれてこないほうが良かったのか?』(筑摩選書)。

日本語の本で、ここまで反出生主義について網羅的に解説をした本ってないような気がする。

ただ、教科書っぽくはなくて、森岡さんの主張が随所にゴリゴリ入ってくる。教科書として捉えながら読むと、森岡さんの主張に引きずられるので、誘導するな! という気持ちになるかも。私は森岡さんの主張にかなり共感できたのであんまり気にならなかったが。

 

森岡さんという方のことを全然存じ上げないが(無知でごめんなさい)、多分だけど、もともと英語・ドイツ系の哲学を専門にしておられたのではないかという感じがする(調べてからものを言え)。なぜならショーペンハウアーのところだけ異様に難易度の高い文章だったから。オタクがオタクをやっているその様が透けて見えるようだ、と思った。

仏教についての項目はすごく分かりやすかったので、別の人が書いているのかとすら思ってしまった。間接的に中村元に騙されているということはないのか?! と不安。でもサンスクリット語読めないもんな〜。

 

私は反出生主義について考えるのが結構好きなのだが、ベネターの主張にはあんまり賛同していない。森岡さんもベネター微妙だな〜と思っているみたいでよかった。

何しろベネター、「快楽」みたいな主観的なものを、客観的にはかるというのがまず分からない。「みんな、自分の人生はそんなに苦しくないと思っているかもしれないが、実は苦しいのだ」みたいな主張、みんなどうやって賛同しているんだろう。お前は誰だよ、ちくわ大明神かよ。

私は行動を伴わない哲学が嫌いだ。「人類は絶滅するべきだ」と主張するなら、なぜそれが正しいかに拘泥せず、いかにして絶滅させるべきかについても考えてほしい。ケダモノとして繁殖したがる人類全体の口をいかに塞ぎいかに絶滅させるのか。そこがよく分からないので、思想として空虚だと感じる。

繁茂するな、みんな滅べ、とか言われても、私たちは滅べない。息子とその子孫よ繁栄せよと思うし、セックスはたのしい、妊娠も楽しい。やっぱ結局、「そんな怨嗟をぶつけるよりもあなたが死ねばいいじゃん」と思ってしまう。「苦痛を感じる生き物が存在する」という観測を行うあなたが存在しなくなれば、ことは全て解決するので・・・。人類がいなくなっても夕陽は赤いか問題・・・。

どちらかといえば「スマートフォンなどを用いて全人類を洗脳し、苦痛を苦痛と感じなくする」とかの手法のほうがむしろ私は共感する。

 

全然関係ないのだけど、女性で反出生主義の方をみると、「反出生主義をブチたてた哲学者の多くは、結構ゴリゴリの女性差別主義者でもあるから、あなたがどんなにその思想を愛しても、その思想はあなたのことを受け入れないのでは・・・」と思って不安になる。女の人はそういう気持ちとどうやって向き合っているのか。

なんかアニメでこういうのあるじゃん。悪の幹部の一人で、ラスボスからは全然必要とされてもいないのに、命を賭してラスボスを守ろうとするやつ。切なくなってしまう。

っていうかこれは多分女が学問をしようとするときあるあるなのでは。文学とか全体的にそうだった。「それにしてもこの学問は女をそもそも人間とはみなしていないので、女がいくらこの学問について、自分に当てはめて考えてみても、無意味」みたいな。

 

それでもなお学問がしたいとき、女は「私は女なんだけど、大体まあ男の気持ちも分かるので、男の下位互換みたいなものだと考えていただければ幸いです」みたいなノリでやっていくか、

「うっせ〜! お前らがお呼びでないなら私は私独自の方法で学問をやっていくわ!!!」みたいな感じで、構造そのものを破壊しながら突き進むか、どっちかになりがちなような気がするのだが、どっちにしても疲れる。

 

なんで昔の男はテキトーなことばっか言ったんだろう。

 

っていうか、女について偏見を持たないってそんなに困難なことなのか。死ぬほどいるじゃん女なんて。神なんて誰も会ったことないのに、学問として体系だっているというのに・・・。

でも私も男のことは夫と息子しか知らない(夫と息子を見ている限り、彼らは女である私と、非常に似たような生き物であるように感じる)。

 

夕ご飯はしこたま買ったパンと、前日に買っていたサラダ。おいしかった。

 

息子が早起きしたので朝にブログが書けなかった。昼までにかけたのでよしとする。