犬すき 犬きらい(今週読んだ本)

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今週読んだ本

小説以外

矢作直樹『自分を休ませる練習』

檀 乃歩也『北斎になりすました女』

『現代思想2019年5月臨時増刊号 現代思想43のキーワード』

高神 覚昇『般若心経講義』

野澤 道生『やりなおし高校日本史』

齋藤 勝裕『やりなおし高校化学』

上野千鶴子『在宅ひとり死のススメ』

松岡亮二『教育格差』

小説

廣嶋 玲子 『ふしぎ駄菓子屋銭天堂 1』

酉島 伝法 『るん(笑)』

絲山秋子『袋小路の男』

カフカ『審判』(青空文庫)

今週読んだ漫画

鶴谷 香央理『メタモルフォーゼの縁側1〜5』

和山 やま『カラオケ行こ!』

和山 やま『夢中さ、きみに。』

和山 やま『女の園の星』

 

 

今週は頭が痛くて横になっていることと、あと、一人での外出が多かったので、いっぱい本を読んだ。

 

アンガー・マネジメントの本を先々週ぐらいに色々読んだので、次はどう考えてもマインドフルネスだろ! と思って読んだ矢作直樹『自分を休ませる練習』、全くマインドフルネス感がなく、普通になんか、あの、書店でよくある「自分を愛する」系のやつだったので、私の求めていたものはこれじゃない・・・と思った。

 

マインドフルネスの本、なんかいいのないのかなー。昔一冊読んだ本ですごい好きなやつがあったんだけど、本のタイトルを忘れてしまった。なんかインドまで修行に行った白人の本だったのだが・・・。カバーの紙の質がざらざらしてて可愛かったことしか覚えていない。あと、この記憶はファクトフルネスと混同しているような気もする・・・。読んだ本を紙のにおいと質で覚える悪習。

 

自分を愛する系の本、「まとめ」みたいなのが2〜3ページに一回挟まれることが多いのだが、まとめている人(多分著者ではない)の能力が高すぎて、「まとめだけ読めば他を読む必要はあまりない」みたいな現象が起こりがち。

 

葛飾北斎ってなんか今年ブームきてないですか? そんな気がするんですよね。というわけで、このへんの知識をつけなければならない、と思い、葛飾北斎とか、江戸時代あたりのことについての本を買って、軽やかに積んでいる。『やりなおし高校日本史』と『北斎になりすました女』、面白かった。

 

『やりなおし高校日本史』、基本的によく分かんね〜と思いながら読んでたんだけど、すごく面白かったのが、徳川綱吉は別に犬そこまで好きじゃなかったという話。

綱吉の時代は色々あって野犬がすごく多くなって、民家を襲ったり、捨て子とかを食べちゃったり、めっちゃ治安が悪くなっていたので、犬は基本的に飼ってくださいね、ということにしたらしい。

で、綱吉をバカ殿だなあと言っていたのは主に武士だったらしい。武士の声がやっぱり一番残るから、今でも綱吉はバカ殿という印象が強いそうな。

野犬を捕まえたりするのが武士の仕事として新たにあてがわれたんだけど、「犬を町中追っかけ回してる侍、バカっぽくてウケる」という感じでめちゃくちゃ街の人から笑われたので、武士はおこだったそうな。

あとなんか国中にお医者さんを派遣したりとか、刑務所に、冬はあったかい服、夏はいい感じの服を支給したりとか。綱吉の時代はかなり安定したいい時代だったんだって。

 

綱吉の兄の時代に、殉死禁止令ができて、そのあと綱吉の時代で、忌引きの文化とか、生類憐れみの令とかができたことで、「人を殺せば殺すほど偉い」みたいな、武家社会の頃の価値観が完全に終わって、「弱い人を助けるのが一番偉い」っていう文化が出来上がったんだって。

 

そう考えると、今の私たちが西洋的な価値観にスッと馴染めているのは、綱吉が頑張ってくれたおかげなのかもしれない。

 

小説で面白いなーと思ったのは『ふしぎ駄菓子屋銭天堂』だな。心に何も残さず、スッと読めてスッと現実に戻れる。みんな言ってると思うけど週刊ストーリーランドだった。確かに小学生向けの初めての読書体験って、これぐらいの「軽さ」がいいような気もするね。多少「善と悪」がキッパリ描かれているのが鼻につくけど(虐待する母親の描かれ方とか)、まあこういう物語の性質上仕方ないのかもしれない。

 

かなり期待した『るん(笑)』はそこまで面白くなかった。がっかり。

疑似科学をみんなが信じている社会っていう設定なんだけど、疑似科学を悪者にしたいという欲望が強すぎて、その社会が疑似科学を主流のイデアとして採用するメリットや合理性が見えてこなかった。

多分、2040年ぐらいの日本を舞台にしているんだろうなっていう感じもピンとこない。私たちの社会と地続きの感じがしなかった。

ディストピア小説の真髄は、「確かに、今の社会を突き詰めると、るん(笑)みたいな社会になっちゃうのかも・・・」と思わせるところにあると思う。

でも、『るん(笑)』の世界に、日本社会がたった20年程度でなってしまうとはどうも思えなかった。いやどう考えてもここに至るまでに歯止めがかかるだろう、と思ってしまう。

なぜ思えなかったかというと、作中で疑似科学を信奉するメリットが提示されていないから。なぜデメリットしか存在しない思想を採用せざるを得なかったのか、という理由がない限り、このディストピアは現実のものにはならない、と思うんだ。

 

現実のものになりえない近未来ディストピア小説の存在意義って何かっていうと、「スピリチュアルとかの疑似科学を馬鹿にできる俺たちのインテリ性」を仲間内で確認することなんじゃないですか。と思ってしまって鼻白む。言語を創造する試みも中途半端。

 

 

漫画は、和山やまがよかったな。作品3作を夫に借りて一気読み。安心して読めた。