彼らはあなたが産めなかった「あの子」の代替物ではない

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養子縁組についての本をチマチマ読んでいる。「養子縁組についてお勉強したい」と思った大人向けの、網羅的なページってそんなにない気がするな。そのうち記事にしてまとめようかな。

 

思ったよりも日本語の書籍が多くて、驚いている。教科書的なものも含めると、かなり長く勉強ができそう。

反出生主義とか、子供のいない女性についての本(不妊治療中は除く)は、ものすごく少なかったことを考えると、日本って子供が好きなのかなあと思う。いや、反出生主義とか選択子なしは、養子と違って制度じゃないから、当然なのか。うーん。

 

でもやっぱり日本って「育児すること」に熱心だよね。

育休とか、当然のように男女どちらも取得できて、しかも1年間きちんと有給なのとか、実はすごい。それが、個々の会社で福利厚生として取り組むことじゃなくて、国の事業としてやってるのもすごい。

制度とか運用が、機能として追いついていないことは多いのかもしれないけど、子供に携わる人たちの熱意とか情熱はかなり強いと思う。「この制度考えた人たち、マジで子供のこと大好きなんだろうな」って思うこと多い。

日本は育児しづらい国、終わってる、みたいな論調あるけど、日本の優れたところはいっぱいあるよ。そこをきちんと認めて、どうしたらもっとよくなるのか考えたほうが、建設的だと私は思う。

 

・・・でも、「終わってる!! 他の先進国に行く!!」って強烈なモチベーションができるから、かえって良かったりするのかな。海外に住んでみないと、日本の良さって本当の意味では相対化できない気がするね。都会に住んで初めて気づく、地元の良さ的な。別れてから初めて気づく、元カノの良さみたいな(?)。

 

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ちなみに、養子縁組に関する本は、電子書籍には対応していないことが多い。持ち運ぶと肩が凝る・・・。でも、教科書っぽいものが多いから当然っちゃ当然かもしれない。マーカー引いたり書き込みしたりしながら読むから、紙でもいいんだけどね。

 

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勉強していくほどに、養子を迎えることは、たんに血が繋がっていない子供、ということでは全くないんだなあと分かってきた。

実子を産んだときは考えもしないような、色々なケアがかなり必要になる。

産みの親とのつながり、養護施設との関わり、ルーツについて、遺伝的な特性について、子供の心のケアについて、生みの親の心のケアについて、障害を持って生まれてくる可能性、「楽しい我が家」が作れなくなる可能性、とか、色々。

我が家はさらに、実子がいるから、短期預かりをするべきか問題もある。息子が「自分もいずれこの家から出ていかないといけないのでは・・・」と思って、傷ついてしまう可能性とかもあるわけだし。

産んだってリスクがあるのは同じじゃん、とか思ってたけど、全然そうじゃないんだよな。やっぱり、私たち夫婦が今妊娠したって、別に何のストレスも感じないと思うもん。やったねえ、嬉しいねえ、可愛いのが増えるねえ、で終わりだよ。

望まない妊娠、我が子を手放すほどの決意をせざるを得ない状況がどういうことかだよ。

 

加えて、私たち夫婦も、「外部にガッツリ開かれた育児」をできるのかという問題もあるんだよな。

 

そういう、あらゆるリスクを乗り越えてでも、やっぱり里親になりたいのかっていうのは考えるべきだよな。やっぱり本当に、「子供が欲しい人のための制度じゃない」ってことなんだ。

 

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子供が欲しいだけで、さらに産む能力があるなら、産んだほうがいいんだよな。

(ここでいう「子供が欲しいだけ」っていうのは、つまり、困ってる子供を助けたい、みたいな思いがなくて、という意味)

ストレスの少ない妊娠期間を過ごし、タバコもお酒もドラッグも10ヶ月間はたしなまず、医療機関のサポートのもとで産んで、

産んだあとは、清潔で喧嘩のない家の中で、母親や父親、祖父母、近所の人、保育園の先生とかの、信頼できる複数の他者と、アタッチメントを形成しながら暮らす。

この「当たり前」とされがちなことがどれほど、子供にとってのギフトかっていうことなんだよな。里子ちゃんは、こういう環境をゲットできない可能性が結構高いわけで・・・。

 

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里親になりたい、と考えたときに、私が最初に読んだのは、「里親になった/特別養子縁組をした大人」の書く、「不妊治療を乗り越えて〜やっと会えたね〜」みたいなキラキラストーリーだったんだよな。当たり前の育児がこんなにも嬉しい✨みたいな。

不妊治療を乗り越えた人は、そりゃあやっぱり、産んだのと変わらないですよ、と言いたいだろうなと思う。私には産む能力がなかったけど、でも、人並みに「育てる」という行為ができるんですよ、というアピールになるもんな。不妊治療によって傷ついた母性性の回復みたいな。そういう道具として里子を使っていないと言い切れるのかな(本当にひどい言い方でごめんなさい)。

 

でも、産むのと、実の親から育児を放棄された子を引き取るのとでは、やっぱり、育児の前提みたいなものが全く異なるよ。そこをあえて「同じです」と強弁し、あまつさえ情報発信すらしてしまうのは、これから里親になりたいと思う人にとって有害ではないかとすら私は思います(語調がかなり強くてごめんなさい)。

 

どうしてこういうふうに、キラキラした情報に偏るんだろう。でも育児とかもそうか。キラキラの側面だけを強調されてきた時代があったよね。私(92年生まれ)が子供の頃って、育児は素晴らしい、以外のコメントって見たことなかったかも。一番酷い育児で、「クレヨンしんちゃん」のミサエ、みたいな。バタバタで色々大変だけど、やっぱ家族っていいよね〜〜! みたいな感じが多かった気がする。

私が「育児って大変なんだ」って知ったのは、20歳ごろに友人が子供を持って、「育児はクソ大変」という話を聞いたんだけど、それが初めてかもしれんな・・・。

 

里親なんて、もっともっと数を増やさないといけないんだから、あんまり大変ですよなんて言わずに、ハードルは低くして、キラキラの面をもっと強調したほうがいいのかな。でも、子供のための制度なんだし・・・親がそれなりに知識を持って、いい面も悪い面も理解した上で、自分たちが何をしようとしているのか把握して、里子を迎えるほうがいいような・・・。うーんうーん。

 

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いずれにしても、やっぱり、児童相談所に電話をかけて、色々話を前に進めることにしてよかったなあ。こんなにたくさんのことを考えられて、新しい知識がついて、嬉しいよ。

 

息子との兼ね合いもあるし、最終的に里親になることが難しかったとしても、この問題は考え続けていきたいし、大変な状況にいる子供たちに対するサポートとかができたら嬉しいなあ。寄付は前から、民間団体にずっとしてるんだけど、どっちかっていうと養護施設とかにいる子供に対しても寄付とかがしたいな。

 

・・・調べてみたら、寄付サイトがあった!! 知らなかったよ〜。毎月1000円から寄付ができる。皆さんも寄付してください。

leavehome.org

 

我が家では、「寄付はコスパがいい」という話をよくする。自分たちの生活が困らない程度のお金を誰かに渡すだけで、誰かの人生を良い方向に変えられるの、楽だし、めちゃくちゃ気分がいい。

美容院の頻度を2ヶ月に1回から3ヶ月に一回にするだけで、子供に感謝されて、善人ヅラができるんですからね、楽なもんだね。汗水流せよと思うけど、まあこれも支援の形だし・・・。やらない善よりやる偽善・・・。

 

まあ、そんな感じで、里親について考えてます。