昼なんてクソでも食ってろ

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最近、もう正直なところ「私は狂ってしまったのか?」と思うほど、地獄のようにつらかったのだが、どうやら頑張りすぎていたらしいと分かった。

もう頑張るのはやめ!! 家事は放棄! 育児は愛するだけ!!! 好きなことを好きなだけ!!!!

頑張って頑張らないようにするぞ!!!

 

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発見したのだけど、私は「お弁当を作る」という行為で、「完璧な女になりたい」スイッチがゴリゴリにONしてしまうっぽい。

そういえば、過去にも自殺未遂したことがあったんだけど、そのときも夫のお弁当を作っていた。

 

今回は、幼稚園の給食がなくなって、8月から毎日息子のお弁当を作っていたのだが、2ヶ月続いてもう完全にダウン。イライラしまくっている。

 

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いや、お弁当が苦手とかじゃないの。むしろお弁当、作るの好きなんですよ。

息子もいっぱい食べるし、彩りも完璧、幼稚園の先生からも「子供が食べる・栄養キッチリ・彩りよい・冷食を使ってない、すごい!!!」とめちゃ褒められる。

 

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先生はほぼ毎日、私のお弁当についてコメントしてくれる。きょうのおかずは素敵だった、きょうのおかずはちょっとダメだった。こんなにコメントしてくるなんて踏み込みすぎだと思うし、どう考えてもおかしいんだけど、「言わないでください」とはとても言えない。

いや、言ってもいいんだけど。

多分、言ったら確実に「要注意のお母さん」みたいに扱われる。

 

というかあの先生は、私のことを若くてデキ婚してしまった母親だと思っていて、「ケアが必要な人」として接してくる。「いいんですよぉ、毎日頑張ってますよお、すごいですよお」と言ってくる。別にあらゆる親にはケアが必要だとは思うんだけど、明らかに他のお母さんとは会話の感じが違うんだよな。

 

私、病院かよって妊娠したんですよ、と言いたい。でもそういうのはトゥーマッチなので言わない。

 

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分かる人には分かると思うけど、「いいお母さんですね」って褒められるのは、元カレから「いっぱいイっちゃう女っていいね」と褒められるのと同じ。

「正しい女だね」「漫画みたいな女だね」と褒められることってつまり、「もっとお前自身を殺せ」と要求されているっていうのと同じだ。

つまり具体的にいうなら(下ネタを言うのは面白いからどんどん言う)、セックス中に彼氏をドンと突き倒して「やめろ!!」と怒鳴るのと一緒だ。

「汚い指で私の大事な膣を摩擦するのはやめろ!!! 火でも起こそうとしてんのか、あと唾液を付けるな、汚らわしい!!!」セックスは終わりである。

私と彼氏はお互いに対してイライラしながら背中を向けてシングルベッドに入り、しょーもないパズルゲームと、しょーもないソシャゲをする。

 

「理想的な女だね」「もっと理想的になってね」。嫌な感じだ。

私は私の私らしさをもっと大事にしてあげたい。なぜなら、私には「私らしさ」というものが存在し、それは私にとって非常に大事なものだから。

 

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でも一方、お弁当を作って「いいお母さんですね」と褒められるのは気持ちよかった。それが問題だ。「正しい女をする」みたいな動詞があるとして、それってすごくキモチいいのだ。

非の打ちどころのない生活、漫画みたいに存在すること。こういうのは「いい」。

 

なんていうのかな。

なんていうのか、「お前は人よりも劣っている」ってずっと頭の中の誰かが言ってるんだけど、正しい女として生きてると、そういう頭の中の声に「ざまあみろタコ」って言える感じがするんだ。

私はこんなにも知的なのに、家庭的なんだぞ、お前らは家庭的なだけか知的なだけだろ、両立もできないで人のことバカにしてんじゃねえぞ。

 

誰も私のことをバカにしていない。でもそういうふうに思う。

っていうか、面と向かってバカにされた経験なんて数えるぐらいしかない(と思う)。でもやっぱり、「私って別に、そこまで劣ってるわけじゃないよね?」と何度も何度も自問自答する。

 

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お弁当を作る。先生から褒められて嬉しいと思う。

仕事をしているのにお弁当も完璧ですごいですね、と言われて、そうかこれが「100点満点」か、と思う。

もっと完璧な女の人になりたいと思う。

 

たとえば、完璧な妻は、夫に家事や育児を頼んではいけない、と思って、夫に「もっと自分の時間を満喫したら」と言う。

完璧な女はこなせるはずだ、と思って、仕事を頑張る。もっと頑張る。どんどん頑張る。

 

しわよせは息子にいく。私は息子を怒鳴る。用もないのにキレる。

なんでかというと、この世の中で息子だけは、私が完璧じゃなくても、それでも愛してくれるからだ。私はそういうことを知っていてその事実を悪用する。

 

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また正しい女として生きようとしてしまって、それができなくて、それでイライラした。こういうのはやめようと何度も思ったはずなのに。やっちゃったなあと思う。なにしろ息子に悪かった。ほんとに。

 

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家事はもうしない。お弁当なんてもう作らない。リンゴ剥いて、クラッカー渡して、それで終わりにしよう。どうでもいいよ、栄養価なんて。家で野菜とタンパク質は食わせますから。

 

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息子を抱っこする10分削ってまでお弁当作って、それを「愛情の形」と誇れなんて、狂ってるよ。私はバカだから、お弁当が「愛情」だなんて、アルミ缶に入った冷たいお米見たって、そんなの全然分からない。

やっぱり愛されてるって、ハグされてるときですよ。ねえ。訳のわかんないワガママに「そうだね」と言ってもらえるときですよ。見つめあって笑ってくれてる相手がそこにいなきゃ、愛されてるなんて実感できない。

それでさバカの子供なんだから、息子だって相応にバカなはずだよ。君、きっと、君の食べてる飯を誰が作ってるかなんて知らないでしょう。

 

私は彼を抱きしめたいのだ。なぜなら頭が悪いから。

言い換えるなら、弁当なんてクソ食らえだ。愛の形を強制するな。