実子のある家庭が養育里親になることの問題点について

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先日、ワクチン受けてきた。ファイザー→ファイザーと打ったので、3回目はモデルナにしました。2回目ほどのしんどさはなかったかな。そんな感じでした。

 

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土曜日、里親家庭に関する研究会に出てきた。

https://20220326foster.peatix.com/view

 

コロナで研修が中止になったり、受け入れ可能な施設が少なくなったりで(当たり前なんだけどね)、なかなか里親登録ができないので、

どうせなら、進まないのをいいことに、色々勉強とかボランティアを続けて知見を深めようかなという感じ。

 

以下は、研究会で考えたことのまとめ(研究会についての内容をアップロードすることが問題になりそうであれば、すぐに削除します)。

 

●里親家庭にいる実子には、それなりにストレスがかかる。

虐待サバイバーとしての里子をケアすることは、大人でも難しい。

そんな中、実子は、むしろ同じ「子供」として、里子から信頼をおかれ、サポートをする立場になることも多い。

問題になるのは、

・負担が大きい

・期間がずっと続く

・自分の同意なしにサポート要員としてカウントされる

・自分のケアが全くない

・喪失体験が起きる

ということ。

イメージとしては、ヤングケアラーと同じような立場と考えると分かりやすい。

(というか、里子を「ケアが必要な子供」と解釈するなら、ヤングケアラーと定義しても差し支えないようにも思う・・・でも後述する「喪失体験」なんかは、里親家庭における実子に特有の問題であって、個別具体的に対策が考えられるべきであろうと思われる)

 

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具体的に説明していく。

 

●負担の大きさ

研究会で例示されていたのは、

・一緒に遊んでいるときに、里子が、自分の受けてきた虐待などを、遊びや話の中で使ってしまうことがある。

・それが性虐待などの苛烈なものの場合、PTSDになることがある。

・たとえば、あらゆる性的行為について強い忌避感が出たりする など。

これは、18歳以下の子供に与える負担としては、大きすぎるだろうと思う。

 

●期間について

委託が長期にわたる場合、里子と実子はほとんど兄弟のように育つこともある。

現行の法制度では、里子は基本的に18歳で里親家庭から出ていくけれども、だからといって里親家庭がその後は一切支援を止めるということは、(人情的な意味で)どうなのか。

ただ、

・里親が里親をやめる

・里親が死ぬ

というような状況ももちろん起こりうる。

そうなったときに、実子は、里親業を親から引き継ぐべきか?

もしも引き継ぎたくなかったとして、「自分には引き継げません」と言うことに対する良心の呵責もある。でもこの良心の呵責って、本来、里親家庭じゃなければ覚えなかったはずの良心の呵責。なんで私がこんなことで悩まないといけないの? という思いは、もちろんあって然るべきだよね。

 

●同意や知識なしでのサポート

里親家庭の実子は、多くの場合、里親制度についての構造的な知識がない。

里親制度とは何なのか? を誰も、子供に対して説明してくれない。

 

また、同意がないまま里子を迎えることが多い。

親子で生活していたのに、ある日いきなり、自分よりサポートを必要とする弱者が家の中に入り込み、その子と、なるべく穏やかな人間関係を構築せねばならないとしたら。

それってすごく嫌ではないか。

 

里子には、急に家出をしたり、リストカットをしたりするなどの子供もいる。

たとえば、そういう「メンタルが不安定な子」って、同意があって付き合った彼氏・彼女の関係でも、かなり負担になるケースが多い。

言葉を選ばずいえば、実子は、同意も覚悟も一切なしに、大人の事情で勝手に「メンヘラ」のサポートを押し付けられた状態。これは結構しんどいものがあるのではないか。

 

●ケアが全くないこと

研究会では、ここにかなりのウエイトが置かれていた。

1)そもそも実子自身、自分のストレスに気づいていないケースも多い

毒親家庭で育ってきたことに、30歳ぐらいで気づいた・・・というような人がいることからも分かるように、

「うちって変」「親は間違っている」ということに気づくのはかなり難しい。言語化もしづらい。

小さいうちから「家に里子がいることが当たり前」の場合、里子から受けるストレスを、「ストレスである」と認識することがまず困難。

 

そのため、「理由はないけれどもなんとなく毎日イライラする」などの状況に陥りやすい。

 

2)気づいたとしても、言いづらい

里親は、「道徳的に優れた人」「尊敬するべき人」と扱われることが多い。

そのため、里親の悪口や、ケアを押し付けてきたことについての愚痴を言おうとすると、「あなたのお父さんお母さんは正しいことをしているのだから・・・」と、意見を「封殺」されてしまうこともある。

(→これは裏を返せば、里親家庭の実子に対して「あなたのお父さんお母さんって偉いね」と声かけをすると、その人は実子の心の中の「何かあったら相談したい人リスト」から自動的に外されることを意味する。地雷なのでやめましょう)

 

それから、里子と自分を比べても、「実親がいるんだから幸せだと思うべきだ」と、自分の中で自分を納得させようとしてしまうこともある。

 

じゃあ親族なら相談できるかというと、

・祖父母に話す→祖父母が怒って、里子を施設に戻せと要求するかもしれない。

・兄弟に話す→そもそも兄弟がいない/いたとしても、どれぐらい悩んでいるかは兄弟によってそれぞれ異なる

などの理由から、相談しづらいケースも多い。

 

3)カウンセラーに知識がない

守秘義務を守ってくれるカウンセラーならよいのかというと、そもそも、日本には社会的養護について知識のあるカウンセラーがほとんど存在しない

そのため、カウンセリングを受けているのにまず「里親制度とは」についてクライアントである自分が教える、というような状況も珍しくない。相談するまでに疲れ切ってしまう。

 

結果的に、PTSDになりうるような深刻な心の傷であっても、一人で抱え込む必要性が生まれる。可哀想。

 

●喪失体験について
日本では伝統的に、里子と実子を「きょうだい」として育てる傾向がある。

また、日本の制度では、(自治体にもよるけれども)

里子が措置解除(=実親のもとに戻る、施設に戻るなど)になった場合、それ以降、里親家庭とは一切の連絡を取らないようにすることも多い。

兄弟として育ってきた人間が、ある日突然、一生会えなくなる。これってほぼ死んだのと同じ。

兄弟が死んだショックを受けているのにもかかわらず、グリーフケアがなされない。これも実子の心に大きな傷を残す可能性がある。

 

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実子の性格形成について、想定されうることとして、

・自己尊重感がなくなりやすい

・過剰な利他心を持つようになる(ある種の認知の歪み)

というようなことが起きうる。

 

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●大人がとりうる対応

・ライフストーリーワークの実子:年表を作るなど。誰といつ、一緒に何をして生活していたか思い出せるようにする。
・話せる大人、仲間、場所を作る
・児童相談所に対して、実子の様子をきちんとレポートし、提出させる
・里子も、養育里親研修に参加させる
・親と違う場所で意見を聴取する

・子供を受け入れる前に、実子に「これからこんな子が来る」と説明をする

 

●でも難しいよね、というポイント

実子への、里子にまつわる説明について。

 

里親家庭って基本的に、一つの公的機関のようなもの(施設が家庭になったようなイメージ)。

当然、里子の情報については守秘義務が発生する。

 

でも、たとえば実子が6歳とかで、そこそこ幼かった場合、「守秘義務がある」って言って、どれぐらい理解してもらえるものなのだろうか。

里子のことを実子に理解してもらうために話すことは重要なのだけど、それをきちんと、外部に言わないようにできるんだろうか。というような懸念はある。

 

(私は、でも、それを考慮してでも、きちんと実子に、事実を話したほうが良いのでは・・・と現時点では思う。だって一緒に生活して、一番、子供同士として濃密な時間を過ごすのは実子なんだから)

(でも、考えてみると、学生時代、彼氏とか友達の家庭環境とかってあんまり知らなかったかもしれない。そう考えると、知っていても知らなくても、友達として接することはできるのかなあ。どうなんだ?)

 

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研究会のまとめはそんな感じでした。

この文章、本当に問題ないかなあ。問題あったら消します、すみません・・・。

そんな感じです。