きみは私の息子の泣き声がきらいだと言った。嘘。「この世の全ての赤ちゃんを殺したくなる」と言った。私は笑えなくなってきみのことを一生ゆるせなくなる、こんなことで10年以上つづいてきた清らかな友情を打ち棄ててしまって。
言いそうになって慌てて胸を閉じる、吸って。
「本当に」
ブロックしてしまって、SNSで誰のことか分かるようにあなたの悪口を書いてしまって、あなたの友達があなたのことを嫌いになるように仕向けてしまって、あなたが死ねばいいと思ってしまって・・・
吸って。
息を吸って。この先にはどんな言葉も続けられない、
新生児の泣く声はセックスするときの猫よりももっとか細い、あの子きっと今死んだってよく分かんないままなんだろうね痛みが何なのかも知らないんだから、曖昧な境界の中でじっと今この瞬間に存在をしているだけ
きみは選挙カーが嫌いだと言って「じゃあ選挙カーに乗っている政治家を殺したら」と私は言う、言っていない、「そう」日本をよくしたいなら学生の勉強の邪魔するなって思うよねときみは笑った赤ちゃんも妊婦も障害者も老人も女もおっさんもみんな殺したいみんな殺したい殺してやりたい殺してやるときみは言う笑いながら言う私に向かって言う
私はきみを殺してみたい
きみが赤ちゃんを殺せる世界できみを殺してみたい。きみが偉い人を殺さず赤ちゃんを殺す世界できみを殺してみたい。だってきみは偉くないからさ稼いでいないからさ偏差値が低いからさ恋人がいないからさ顔が変だからさ心が弱いからさ殺してみたいよきみがかつてそう言ったように
私にはきみを殺す権利がある
「なぜ産んだの」とあなたは私をまっすぐ撃ち抜いたつもりでいる、自分の遺伝子が残すに値するとか思ったわけ思い上がりも甚だしいねあなたは囁く。笑ってしまった私は「なぜ生きているの」と聞いた、「なぜ死ねないの」ともう一度聞いた、「なぜ正しくなれないの」
急がない黙らせられない頸のもつれてひがみあった捻れがきっと今のあなたの一番しんじつ味のある陶酔で、おかしいよね、くだらないよね、私にそうやって聞くんだから私も聞くね、なぜ正しくなれないのにまだ生きるの
おっとりした地獄の中をパルクールするあなたは私を黙らせる殺意をひらめかせる氷の中にしたたらせたアイスティーの原価を気にする
suck it、
ここはほんとうに酷いよね
ここはほんとうに酷いよ