2020-01-01から1年間の記事一覧

【詩】この世界に何にも必要ないの、もう私は

修学旅行に置き忘れてきたみたいな雷鳴ばかりが鳴る (女の子は頼り甲斐がなくて私が殴るとすぐに死ぬ) あなたの名前は遠い日にもやっぱり同じ、どれほど好きかと語るあなたの青い目、コンタクトレンズ、遠い国に置いてきた私の子宮とそれを食い破ったポリ…

【短編小説】8月31日の私を、リエさんはぜんぜん知らないでしょ

リエさんと知り合ったのは私が自殺でもしようかなと思いながら公園でブランコに乗ってるときだった。 中学生ってまあまあ何してても補導されるみたいなところがあって、だって昼間に歩いてもダメだし夜に歩いてもダメだし。結局、家か学校か塾か習い事の場所…

夫と結婚した理由

恋バナをしたいのですが、しかし同時に『未来日記』の話もしたいわがままなオタクなんですけど、(生きてて)いいですか?(いいに決まってんじゃん!) / 皆さん『未来日記』お好きですか。当然お好きですよね。例によって私も好きなんですよ。以下の文章は…

モーリシャス共和国と終戦/完璧な被害者は存在しない、それでも謝罪を行うこと

私はカナダで学生をしているのだが、どうしても好きになれないクラスメイトがいる。ビビという名前の女の子だ。 ビビはめちゃくちゃ性格が悪い。人が話す下手なフランス語/英語をあからさまに馬鹿にするし、授業もあんまりやる気がない。その割に、自分が悪…

アフター・アフターコロナを生きる誰かのことについて

毎年この時期になると「今年ももう後半!!! 1月がつい先月のことみたいに感じる」などと言ってワーワー騒ぐのが私の人生の恒例行事なのだけれども、今年はちっともそう思わない。今年の1月ははるか昔のことのように思える。 なんでかというと、今年の1月は…

【短編小説】仕事を辞めて育てた一人息子は頭が悪いし反抗期、彼に捧げた時間は無駄だったのだろうか

少女が喘ぐ。着ているのか着ていないのか分からないほど透けた制服ごしにゆれる、大きくやわらかい胸を少年に押し付ける。少年は股間を抑える。おもわず射精をしてしまいそうになったのを抑えるために股間を抑える。彼は慌てる。慌てふためく。私は本を閉じ…

200704・詩 | 先週は私が不誠実の身体

きみの魂を先週も救えなかったわたしは放蕩するロマンスの最中、 (きみがどれほど傷ついているかなんて本当にどうでもいい、1から10までの数字で教えてよ、7以上なら会社を休んであげるから) 君は泣き濡れる、私にはけして明かすことのない胸の内を見…

【短編小説】リエちゃんは若くて綺麗で賢くてそのうえ性格がいい

リエちゃんは賢い。それに美人だ。 仕事の飲み込みが速いのはもちろんのこと、飲み会でお酌をするタイミングなんかも完璧だ。計算高いとかそういうわけでもなく、これが彼女のありのままらしい。かれこれ半年ずっと一緒に仕事をしているのだけれども、全然嫌…

【短編小説】「病めるとき」の私のことを君は嫌い、私だってこんな私は嫌い

涼太が由麻を独占するので、私は手持ち無沙汰でガルちゃんを眺める。ガルちゃんって全然面白くないんだけど、インターネットの世界でとりあえず暇をつぶせる場所がここしかないから仕方がない。もっとJO1とかなんでもいいけどアイドルたちの供給があったらこ…

男友達と絶縁をする日

原田くんの話。 / 原田くんは大学生の頃にできた友達だった。過去形で書いたのは彼と連絡を取るのをずいぶん前にやめてしまったからだ。 彼はとてもナイーブで、いつでも自分が傷つくための理由を探しているような子だった。私はそういう子を見つけると近寄…

きみは地獄をパルクールする

きみは私の息子の泣き声がきらいだと言った。嘘。「この世の全ての赤ちゃんを殺したくなる」と言った。私は笑えなくなってきみのことを一生ゆるせなくなる、こんなことで10年以上つづいてきた清らかな友情を打ち棄ててしまって。 言いそうになって慌てて胸…

【短編小説】当たり障りのないつまんない会話をこの先何十年も続けてたら私たち親友になれるかなどう思う?

「知り合いにみみりんみたいな女がいて、素朴に無理すぎてすごいよ」。と、「めうなご」さんはそう言った。Twitterで喋ってたとき予想してたのよりも髪がピンクだしパッツンボブだからめっちゃ強いってか全体的にお洒落だ。でも多分顔は私のほうが可愛いから…

フランス語のオンライン有料教材を淡々とレビューする(内向型・視覚優位のものぐさ人間向け)

コロナを受けて、完全オンラインで受講できるフランス語講座を探している方も多いと思います。いろいろ受けてみたので、よかったもの・微妙だったものを紹介していきます。 まだ使っていないサービス 最初に、こういうときに真っ先に名前が上がってきそうなD…

je n'en peux plus, j'ai dit ça.

踏襲する守りの形が甘ったるくて悲しい私はこんなふうになぞるある一匹の生き物を。知りもしなかった自分の中に存在するその暴力性、に、理屈をつけてはならないと君が言ったのに 私の中に留まり私の内壁を荒らしまわる直訳された言葉をここに従え下らせる、…

【短編小説】素敵なきみに毒を盛る、別れるその日は泣かないように

紫苑は犬みたいなものだ、だから私に忠誠を誓うのとはぜんぜん別な場所でよそんちのメス犬と恋に落ちたりする。 親指をせわしなく動かしながら、紫苑のスマートフォンをすみからすみまで点検する。きょうもやっぱりソヒョンちゃんと会話をしていた。かびっぽ…

【2000文字小説】もう二度と間違ったママでいたりしないから許してごめんね大好きだからね

死ぬほど疲れてたから、とかそういうのは絶対言い訳にはならないと知っていて、でも、死ぬほど疲れてたから、としか言えない。「ひかり今、拓海に虐待したんだよ分かってる?」祥太が吐き捨てたその言葉によって、頭の内側のほうにパーッと嫌な空気がたまっ…

【ニセン文字小説】 欲情はそうぞうしい

その瞬間、自分という肉の塊のことを考える。明るい色のまつ毛がこちらを見据えるから、体の中身について思考を巡らせる。ねえ私たちが欲情すると膣の中から染み出す透明な液体っていったい全体なんなんだろうね、リンパ液か何かなの。何かなのかな? ははは…

【ニセン文字小説】一生こうやって食べることだけ考え続けるのかなって思うとやっぱり死ぬしかないのかなって本当は

箸を使うやる気がなくなってしまってスプーン。白米が喉の奥を通っていくと、うなじが逆立つような喜びに全身が浸された。またやっちゃった、頭の中でぼんやりと冷静な自分がそう呟く、ねえお母さん絶対すぐ帰ってくるじゃんご飯どうするの、炊かないとじゃ…