夫と結婚した理由

恋バナをしたいのですが、しかし同時に『未来日記』の話もしたいわがままなオタクなんですけど、(生きてて)いいですか?(いいに決まってんじゃん!)

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皆さん『未来日記』お好きですか。当然お好きですよね。例によって私も好きなんですよ。以下の文章は『未来日記』のネタバレを含みます。

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なんで好きなのかというと、まあ、誰もがそう言うと思うんですけど、ヤンデレ代表みたいな由乃さんがスクスク活動しているところが好きなんだけど。

由乃さんが他のヤンデレちゃんたちと一線を画する存在になったなと個人的に思うのは、終盤に彼女が発するセリフなんですね。

彼女は雪輝(主人公)に対して「依存できたら誰でも良かった」って言っちゃうんですよ。

よくない?

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みんな薄々感づいてたじゃない。ヤンデレってなんか、主人公のことが好きというより、ヤンデレという状態を維持することが好きなんじゃないの〜? みたいな。その問いに対して「そうです!」と元気よくアンサーしちゃう由乃さん。いいよねえ。

雪輝ってさ、まあ〜パッとせん男なわけよ。最初のほうとかすごい観ててイライラするわけ、オドオドしてさあ、由乃のことも利用して、頭がいいわけでも顔がいいわけでもない。

なぜ由乃さん(つまり、文武両道才色兼備なスーパー美少女)は、こんなレベルの低い男を好きになるんだろう。と思う。愛するための必然性がなくないか? と思う。でも、アニメってそういうもんか・・・とか思いながら観ているところにこのセリフがぶっ込まれて、マジかよとなるわけだな。

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これだけでもすごいんだけど、あとに続く会話もすごくてですね(未来日記語りが長い)。

由乃は続けて、「あなただって、守ってくれる人間なら、誰でも良かったはずよ」って言うのね(これもまた良い)。

で、それに対して雪輝くんは、いや自分は由乃のことが好きなんだって言うのね。で、それがなぜかというと、「ずっと側にいてくれたから」。

すごくいい。

私は「なぜ好きなのか?」に対するこれ以上の答えをあんまり思いつくことができない。

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そういうわけでここからようやく恋バナ。

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恋人と一緒にいるとき、よく「好きってなんだろうな」みたいな気分になっていた。

恋人っていうのが私にとって何を意味するかというと、ありていに言ってしまうと、たとえば、

「セックスオッケーっぽい流れになったからセックスした人」とか、

「会っている間はわりといつでも自由に触れることを許可されている人」とか、

「きわめて感情的になることをお互いに許した間柄」とか、

そういうなんか、かなり即物的な関係性なのよ。

で、それは別に、好きとかそういうことじゃなくない? といつも思う。

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もう少しパキッとした定義を与えるなら、私にとって恋人とは、生きているテディベア、ないし生きているサンドバッグ、つまり、「私が私自身のことをじょうずに愛するための装置」なわけね。

だから、私はいつも、極論を言えば、「今ここで彼氏が死んだら嬉しいだろうな〜」と思っていた。

あなたが死んだら、すごい喪失感を抱えて、でも明日もあなたの分まで生きていくよ、そしてまた恋愛をする。でも、私の書く文章にはどことなく「死の匂い」が常に漂ってて、それが超カッコいい。的な。最高!! 彼氏が死ぬといいことしかない、頼む! 早く死んでくれ〜〜!

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彼氏を愛してるってどういうことなのか、良く分からなかった。死んでほしくても愛してるって言っていいのかな? いや表面的にはかなり尽くしてるんですよ。四六時中彼のことを考えてるし、ご飯も作るし、何もかもぶっちぎって会いにいける、彼のためならなんでもできる。結婚後の姓名判断もチェックしてる(あんまりいい結果にはならなかったけどそれももう受け止めてる)。

でも、今あの人が死んでも、それはそれで全然オッケーなわけ。

愛とは。一生一緒にいるとは。私はいつも分からなかった。

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ところで私は既婚者だ。夫に「死んでくれ〜!」と思っているかというと、全然思わない。死んだらわりと本気で、ショックすぎて半年ぐらい寝たきりになると思う。

で、夫と他の彼氏たちの何が違ったかというと、それはやっぱり、「ずっと側にいてくれたから」ということに尽きるだろうな、と思うわけだ。

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私たちはわりと長い間、お互いのことをセフレと認識していた。「彼氏彼女の関係」というのが死ぬほど面倒だったのだ(私が)。

彼氏彼女の関係って、常に別れる可能性をはらんでるじゃん。だから嫌われないように頑張って自分磨きとかしないといけないし、「理想的な彼女」みたいなものに収まらないと自分に需要がないような気がしてしんどい。

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なんでそういうことを考えていたかというと、夫と付き合う前に付き合っていた元彼がすごく優秀な人だったから。

その元彼と付き合うのはすごく大変だった。理想的な彼女を求めてきてるな〜というのがすごく良く分かったので、必死に理想的な彼女を演じた。

しかし私はもともと、あんまり理想的な女とはいえない。体型は小さくて薄いし、モテるような趣味に興味がないし(当時はホロコースト文学の研究とフェミニズムだったし・・・死ぬほどモテないテーマだな)、恋人とは一日中一緒にいたいし、その割にあんまり可愛いとも綺麗ともいえない顔だし、怒りかたが厄介だし、感情的だし、根がオタクだし、カラオケで引くほど熱唱する。

そういう私のあふれんばかりの個性を全部なかったことにせねばならない。

会いたいとか言わないで、彼の知識量に合うように本をたくさん読んで、いっぱい努力して、背伸びして、デートの日を彼に合わせて設定して、その日までにたくさん自分磨きをして。

正しい女の子やったる、みたいな。人間性をどんどん浄化したる、みたいな。そういうスポ根的メンタルは、3ヶ月ぐらいは楽しいけど、徐々に疲れてくる。

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ある日、仕事が忙しいからこれから1ヶ月ぐらい会えないよ、と言われた瞬間、もう無理だ、と思った。

こんなに頑張っているのに、報酬が少なすぎる。

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恋人と一緒にいるより頑張りたいことがある人は無理だ。仕事と恋人どっちが大事なの? って聞かれて間髪入れずに「仕事」って言えちゃうような男はダメだ。

っていうか。正しく言おう。そういう男を魅力的って思えるのが理想的な女だろ、みたいな世間からのプレッシャーが無理だ。

年収200万円だけど私のことを世界一シリアスに愛してくれて、仕事なんてゴミカスみたいなもんだと思っていて、私がつらいよ〜って泣き言を言ったら仕事辞めて飛んできてくれる男と、

年収3億で、そこそこ私のことを好きだけど、でもまあ私と仕事とを比べたら絶対に仕事のほうを優先する男なら、

断然、年収200万のほうがいい。

というか、前者ですって言い切って、それを許されたい。

もうなんかこの「アゲマン」的な、「優秀な女」的な、「最高の彼女」的な、そういう苦しみのレースから解放されたい。疲れた。

疲弊を癒すのは? そりゃ恋人だ。人に触るのは最高に癒される。自己肯定感上がるし。いや、違う、恋人作って疲弊してるんだった。

困ったな。どうしよう。セックス抜きで自己肯定感あげるの、時間かかるし難しくない?

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そういうわけでセフレというのを思いついたのだ。わりと最適解だった。セックスしたいならありのままの私を認めなさい。以上。それって超イージー。

単なるセフレだから、そいつが彼氏にして誇れるやつかどうかとか、そういうことは全く気にしなくていい。そのへんにいる人が良さそうな童貞をたぶらかせば解決。イージー!

で、そのクソみたいな誘いに乗ってきたのが夫だったというわけだ。

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彼はセックスがしたかったからかなんなのか、私が何を語っても「いいじゃん」みたいなことを言った。へ〜とか言いながら私の話を聞き、一通り喋ったあと、私がセックスがしたいなと思ったらきちんと対応してくれた。偉い。

会いたいから来て! と言ったら会いにきてくれた。仕事休んでね! と言ったらいろいろ頑張って休んでくれた。土日、会いたいからもう電車乗っちゃったからね!!! と言ったら、するべきだった予定をワヤにして私に会ってくれた。「私って天才じゃない?!」と言ったら「そう思う」と言ってくれた。「私のこと死ねばいいと思ってんだろ?!」と言ったら「全く思っていない」と言ってくれた。

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彼はそれに、他の女や男と恋愛をしなかった。

彼のスマホを何回か見たことがあるが、本当に何も出てこないのでつまんなくて見るのをやめた。クソつまんないSafariの履歴、メルマガばっかりのメールフォルダ、私とばっかり喋っているLINEのトークルーム。

彼が寝息を立てている中、1分で終わるチェックを済ませると、つまんねーなー、修羅場ができないじゃん、と思いながら布団に潜り込む。

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日々はなんということもなく流れていき、私は好きなことをして、好きなときに夫と会った。カラオケに行きたくなると彼を誘い、映画に行きたくなると彼を誘い、一人では行きづらい場所に彼を誘っていっしょに行った。帰りにムラムラくるとセックスができてクソ便利だった。

しばらくそういう状態を続けてから、私はふと、こいつと結婚しようかなと思いつく。インターネットで姓名判断をしてみて、めちゃくちゃいい名前! と言われるし、じゃあもうそれでいいじゃん、みたいな気がしてくる。

結婚するか、このままセフレでいるか、どっちかにしよう、と提案し、その結果、私たちは結婚した。

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好きってなんか別に、少女漫画みたいな、もしくはアニメみたいな、そういうドラマチックな要素がなくてもいいんじゃないか、と私は考える。

夫の代わりがこの世のどこにも存在しないし、夫も、私の代わりはこの世のどこにも存在しない、と思っている。それで良くないか?

愛情ってその程度のものなんじゃないのか?

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変な話だけれども、最初から彼と付き合っていたら、彼のことを好きだと思ったかどうかはよく分からない。きちんと愛されるように努力をして、本当の自分、みたいなものをキッチリ隠そうとしたかもしれない。

深い理由もないまま、愛するに足る理由もないまま、彼と付き合い始めて本当に良かったと思う。

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結婚して3年目ぐらいあたりから、私は彼のことを尊敬するようになった。好きだなと思うところが増えてきた。彼はお洒落になって、お洒落になった彼もまたなかなかいいなと思った。顔もだんだん好きになってきた。

どうして愛しているのか、という理由は後付けできるし、別にそれで問題ない。ずっといっしょにいるんだから、理由はゆっくり探せばいいのだ。

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誰でもよくて、そのへんにいた童貞を選んだ。そしてその選んだ童貞は、いつでも私と一緒にいてくれた。いっしょにいるようになって今年で6年目になる。いっしょにいすぎて、たくさんの思い出ができて、だから私は彼が好きだ。

それは誰でも良かったのかもしれない。だっていっしょにいただけなんだから。でも、結局、私とずっといっしょにい続けたのは彼だけで、だから彼以上の人はこの世に存在しないのだ。

少なくとも結婚5年目の今、私はそういうふうに思っている。

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そうですね。

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そういうわけです。