そういう意味でのナタリズミスト

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ダ・ヴィンチ・恐山っていうか、しなだゆうさんの新しい本を昨日読んだ。

 

ただしい人類滅亡計画 反出生主義をめぐる物語』。このブログ、Amazonアフィリエイト登録してないな。わざわざリンクを探してきてうんぬんかんぬんってステップを踏む必要があって面倒だぜ。

 

ただしい人類滅亡計画、面白かった。

この世に突如として生み出された魔王が、魔王としての「本能」で、人類を滅ぼさねば・・・と思うんだけど、魔王は理屈っぽいので、本能にただ従って人類を滅亡させるようなことをしたくないの。

なので、人類10人を集めて、「人間は滅ぼされるべきか」を話し合ってください、その意見を聞いてみたいです。

みたいな話なんだけど。

 

ダヴィンチ恐山の過去2作は完璧に小説だったのに対して、今回のは、反出生主義をめぐる思考の過程を書いている感じ。かなり説明が上手なので、反出生主義について(ちょっとこの反出生主義って打つのが面倒すぎるので、アンチナタリズム=ANと今後は書きますからね・・・)知りたいな〜と思っている人はまずこれを読むと良いと思う。

 

ANに関する書籍って、めちゃ小難しいか、英語だったりなんだよな。

 

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読んだ人しか分からない話するけど、最後のグレーの主張はすごくいい。

私はANがいまいち苦手で、なんでかというと、まあ、「全人類はもう産むな」っていう主張って、あまりにも机上の空論するから。

「全人類は、私の訴えに応じて、産むのをやめるべきだし、この訴えは全人類が受け止めるべきだ。なぜなら私は正しいから♪」っていう、強い自己への万能感を前提にして、そこから議論を進める感じが、それってそもそも議論成り立ってませんよね?! という感じがしたからなんだ。

人類は核の開発みたいな、超高尚な支配と暴力のゲームすらやめられないんだぞ。中出しセックスを止められるはずがねえんだ。

 

なんていうのかな〜。ゲームのデバッグするときに、意味のわからない動きをするユーザーを一切想定せずに、製作者がしてほしい動きだけをテストして、それでバグが出ませんでした、はいじゃあ売り出しましょう、とはならないじゃん。

人間は意味の分からない生き物で、死ぬほど愚かで、動物的で、すぐに産みたくなっちゃう生き物なので、社会を革命したいなら、その無知蒙昧さを加味してもらわないといけないんだよな。と思う。

 

というわけで、品田がこの本の結末で、一応の結論として出した「グレーの言葉」は、この世界に生きる人間として、「出生」という規格外の現象について語ることで、これは結構いいなと思った。

 

もうちょっと議論を読んでみたかったな。でも学問は常に未完ですからね。

 

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さて、ついでに出生主義者としての妊活についても話しますね。

 

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今は妊活1周期目。ピルをやめてすぐなので、排卵がいつになるかよく分からなかったのだが、そろそろ排卵のような気がする。しかしまあ、無排卵の可能性もある。

かなり長期間ピルを服用しているので、自分の体がまだ妊娠できるのかがよく分からない。

本当は病院に行かねばならないことは分かっているんだ。でも内診が心から嫌なので、もうちょっと医療に頼らない妊活を続けます・・・。

 

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ところで、ANの人が出産の数を抑制したかったら、出産費用を高額にした上で、産婆とか産婦人科とかを違法にするというアイデアもありだね。産むことが強いリスクになったら、躊躇う人も多かろう。40代とかなら、経産婦じゃないと尻込みするよねきっとね。

 

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前も書いたのだが、我が家はセックスを一切しないで妊活をしている。紙コップに入った精子を、スポイトみたいなので吸い上げて、膣に入れる。

 

なんでこういう方法を取るかというと、まあ、二人とも言わないんだけど、私が同性愛者だから、というのが大きいと思う。

 

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去年の11月に、なんか急に「別に頑張って異性を性的に見てあげなくても、同性にときめく、この感覚を自分に許してもいいんだ」と思ったんだよね。

それまでの人生において、性欲っていうのは「気づかい」の一種だったんだよな。

目の前の男から殺されないようにするためのものだったり、自尊心が低下したらそれを補強するためのものだったり。

若いうちは(今も若いですが)、能力もないし、異性からは基本的に性的に見られるということもあって、自分が男に性的魅力を感じている、と思ったほうが利益が大きかったんだ。

 

でも、大人になってくるにつれて、男に媚びなくても稼げるようになったし、自尊心も全然さがらなくなってきた。

人に、つまり男に、気づかいとかしなくていいな、と思ったら、じゃあこれって別に、好きな人を好きでいればいいってことじゃんね、と思うようになった。

 

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しかしまあ、夫と結婚しなければよかったかというと、違うんだよな。私の自尊心を大きく底上げしてくれたのは夫だから。

夫と結婚して、セックスをした結果息子が生まれて、それはとても良いことだった。

 

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レズビアンの出てくる映画を見たり、小説を読んだりして、一抹の寂しさみたいなものを感じることはあって、そういうとき、心の置き場が分からなくなるんだけど、まあ、もうこれはどうしようもないよな。私はこういうふうにしか生きてきていないんだからな。

たとえば夫が100歳で死んで、私が102歳ぐらいまで生きるとしたら、1年悲しんだ後、次の1年で恋をして死のうかな。

私のほうが先に死んじゃったら、それはもう、一生夫と添い遂げる運命だったんだなあと思うよね。それはそれでいいんだ。夫大好きなので。

 

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息子がもしも同性愛者だったとしたら、人生の早い段階で気づいてくれると嬉しいな、と思う。他者に対する性的な気づかいって、もうとにかくめちゃくちゃ悲しいですからね。

好きな人のことを好きでいられるのが一番ですよ。自分の感情をちゃんと自分で把握できる、否定しない人になってくれたら嬉しいな。生きやすいってそういうことのような気がします。

 

息子は昨日も泣いていて、急に「一人になりたい」とか言い出したり、実際に一人にさせたら大泣きしたりで、大変だった。息子の一つ一つの感情を否定しないことが、私の今感じているようなほんのりとした寂しさを、大人になった息子が感じないようにすることに、貢献しているといいな。日本語むちゃくちゃですが、まあ、そんな感じです。